2歳前後のお子さんが頻繁に「見ててね!」「ママ、見て!」とアピールしてくることに、戸惑いや疲れを感じている保護者の方も多いのではないでしょうか。この時期にピークを迎えるこの行動は、育児用語で「見て見て期」とも呼ばれ、子どもの心の成長において非常に大切な意味を持っています。
もくじ
1. 「見ててね」はなぜ起きる?〜子どもの心の欲求〜
2歳前後の子どもが発する「見ててね」という言葉は、単純なアピールではなく、いくつかの深い心理的な欲求の表れです。この時期は、自我の芽生えと行動範囲の拡大が著しい成長期にあたります。
1-1. 承認の欲求(できた自分を認めてほしい)
「見ててね」の最も代表的な理由が、この承認の欲求です。
- 「できた」ことへの喜びの共有: 積み木が上手く積めた、絵が描けた、靴を自分で履けたなど、自分で努力して何かを成し遂げたとき、「すごいね!」「頑張ったね!」という言葉で、その成果と、それを成し遂げた自分自身を認めてもらいたいのです。
- 自己肯定感の土台: 大好きな人から認められる経験は、「自分はこれでいいんだ」「自分には価値がある」という自己肯定感の土台を築きます。
1-2. 安全の欲求(見守られている安心感)
特に、新しい場所や初めての遊びに挑戦しているときなど、不安や寂しさから「見ててね」と言うこともあります。
- 愛情の確認: 親の目線や存在を確認することで、「自分は愛されている」「困ったらいつでも助けてもらえる」という安全基地の保障を得ようとしています。
- 不安の払拭: 親が自分を見てくれているという事実は、子どもにとって最大の安心材料となり、新しい行動への挑戦の意欲につながります。
2. 見てもらうことで子どもはどう感じる?
親が「見ててね」に応えることで、子どもは単に褒められた以上の大きな心理的利益を得ます。
2-1. 強い自己肯定感の獲得
「見てるよ」「すごいね」という親の反応は、子どもに「ありのままの自分」が受け入れられていると感じさせます。この無条件の受容感が、子どもの自己肯定感を強く育みます。
2-2. 挑戦心とやる気の向上
自分の行動や努力が親に認められた子どもは、「もっと頑張ろう」「次はもっと難しいことに挑戦してみよう」という内発的なやる気や向上心を掻き立てられます。親の視線は、彼らにとって強力な成長の原動力となるのです。
2-3. 親への信頼感の強化
自分の要求に真摯に応えてくれる親に対し、子どもは強い信頼感を抱きます。この信頼関係は、成長に伴い生じる様々な問題や悩みを親に相談できる、オープンなコミュニケーションの土台となります。
3. 大人はどのように対処するのがいいのか〜効果的な接し方〜
忙しい毎日の中で、子どもの「見ててね」すべてに100%応えるのは難しいものです。しかし、いくつかのコツを押さえることで、子どもの心の欲求を満たしつつ、親の負担を軽減することができます。
3-1. 💡最優先:「今、すぐ」目線を合わせる
全てを完璧に見なくても、最初の数秒で目線と笑顔を合わせるだけで、子どもの気持ちは大きく満たされます。
- 目を見て反応: 手を止めて、目線を合わせ、「見てるよ!」「〇〇ができたのね、すごいね!」と言葉で伝えましょう。スマホや他の作業から目を離さず、「はいはい」と適当な相槌を打つだけでは、子どもは「見てもらえていない」と感じてしまいます。
3-2. 🎯具体的に「共感」して褒める
ただ「すごい」と言うだけでなく、何がすごかったのかを具体的に伝えることで、子どもは自分の努力を認められたと感じます。
- 例1: 「上手に積み木がバランス良く積めたね!」
- 例2: 「この青い色、きれいだね。よく考えたね!」
3-3. ⏳「待つ」ことを教えるときは理由と時間を具体的に
どうしても手が離せないときは、感情的に拒否せず、理由と待ち時間を具体的に伝えましょう。
- NG: 「うるさい!後で!」
- OK: 「ごめんね、今、お皿洗いで手が泡だらけなの。このお皿を洗い終わるまであと2分だけ待っててくれる?終わったらすぐに見に行くね」
3-4. 📅意識的に「かまってあげる時間」を作る
一日のうちで、たった5分でも構いません。親が家事やスマホから完全に離れ、子どもが主導権を握る**「見ててね」専用の時間**を設けてみましょう。この時間で心のタンクが満たされると、他の時間の過剰なアピールが減る傾向があります。
😔「見ててね」を見てもらえないとき、子どもの心はこう叫んでいる!
「見ててね!」という一世一代のアピールを見てもらえなかったとき、2歳前後の小さな心は、実は大人が想像する以上に深く傷つき、不安を感じています。
この状況を、もし私たちが経験したらどう感じるか?想像してみましょう。
たとえ話:一生懸命やった企画プレゼンを上司にスルーされたら
あなたは、半年かけて練りに練った、会社の一大プロジェクトの企画書を完成させました。徹夜もいとわず、誰も思いつかないような斬新なアイデアと完璧な資料を用意しました。
いよいよ、社長や上司の前でのプレゼンの日です。
あなたが渾身の力を込めて、「見ていてください!これが私の考えた、未来の会社を変える戦略です!」と叫び、プロジェクターに素晴らしいグラフとキャッチコピーを映し出します。
❌ 上司A(スマホ作業中)の反応
上司Aは、あなたのプレゼン中も、スマホで株価チェックをしています。
「ああ、はいはい、いいんじゃない。それより、今日のランチ何にする?」
- 子どもが感じる心の声: 「ぼくの努力は無視?」「この遊び(企画)は価値がないってこと?」「僕よりスマホ(ランチ)の方が大事なんだ…」
- 心理的な影響: 自己重要感の低下。「頑張っても意味がない」と感じ、次に新しいことに挑戦する意欲が削がれます。
❌ 上司B(遠い目)の反応
上司Bは、あなたの方を見ようとはせず、遠くの窓の外を眺めています。
「ふーん、まあ、いいんじゃないの。ちゃんと見てるから、早く終わらせてくれる?」
- 子どもが感じる心の声: 「全然見てないじゃない!」「ちゃんと見てるって嘘だ!」「僕のことなんてどうでもいいんだ…」
- 心理的な影響: 不信感の芽生え。言葉と行動が一致しない親(上司)に対し、「この人は信頼できない」という感情が生まれる可能性があります。
❌ 上司C(感情的な叱責)の反応
上司Cは、イライラした様子であなたを遮ります。
「今、手が離せないって言ったでしょ!何回言わせるの!静かにしてなさい!」
- 子どもが感じる心の声: 「僕は怒られちゃった…」「見てほしいって言っちゃいけないことなのかな?」「僕が悪い子だから、見てもらえないんだ…」
- 心理的な影響: 罪悪感と不安感。自分の存在そのものが親(上司)を困らせていると感じ、自己否定につながりかねません。
「承認のエネルギー」の枯渇
プレゼン(=「見ててね」)を見てもらえなかった大人は、「あー、もう知るか!自分の仕事はもう適当でいいや!」とやる気を失うかもしれません。
子どもも同じです。親に「すごいね」「よくやったね」と承認されることで、子どもの心のエネルギー(承認のエネルギー)は満タンになります。このエネルギーが、次にパズルに挑戦したり、友達と仲良く遊んだりする原動力となります。
しかし、それがスルーされ続けると、エネルギーは枯渇。「頑張る意味」を見失ってしまうのです。
だからこそ、お子さんの「見ててね」は、「今、心のエネルギーを満タンにしたい!」というSOSなのだと、このたとえ話から感じ取っていただけると幸いです。
まとめ
2歳前後の「見ててね」は、子どもの自己肯定感や親への信頼感を育むための、かけがえのない大切なサインです。忙しさの中で応えられないこともあるかもしれませんが、最も大切なのは、子どもを否定しないことです。
子どもを一人の人間として尊重し、「見てるよ」というメッセージを笑顔と目線で伝えてあげること。その積み重ねが、お子さんの健やかな心の成長へとつながっていくでしょう。
この「見て見て期」は、親子の絆を深める貴重な機会です。ぜひ、今しかないこの時期を楽しんでください。


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