― 支援ポイント × 遊びで育てる具体例つき ―
もくじ
■ はじめに
保育の現場でよく言われる
「保育は集団を見る。医療は個を見る。」
実際、保育は
- クラス全体を動かす力
- 平等・公平さ
が求められます。
しかし同時に、
「一人ひとりを丁寧に支えたい」
「困っている子の理由を知りたい」
という“個を見る視点”も、今の保育には欠かせません。
では、どうすれば
集団の中で個に合わせた支援ができるのか?
そのヒントが、
子どもの行動を10タイプで理解することです。
■ 子どもを10タイプに分けて理解するメリット
子どもの困りごとは大きく、
- 感覚の調整
- 姿勢・運動
- 感覚の識別・フィルタリング
の3つに関係しています。
10タイプに分けてみるだけで、
「この子はこういう理由だったのか」と理解が深まり、
どんな支援が必要なのかが一気に見えやすくなります。
そして支援は“遊び”に変換することで、
子どもは無理なく自然に伸びていきます。
■ 【10タイプ分類】支援ポイント × 遊び支援の具体例
【1】感覚の調整に関する4タイプ
刺激の入り方(入りやすい / 入りにくい)が行動に直結しています。
① のんびりタイプ
刺激が入りにくいため、動き出しや切り替えがゆっくり。
●支援ポイント
- 短い刺激で注意を“起こす”
- 事前予告で見通し
- スモールステップで進める
●遊びで支援
- タッチでGO!(色やカードにタッチしに行く)
- 動物なりきりゲーム(ゆっくり→速く→止まる)
- 宝探しごっこ(簡単に見つかるものから)
② ガンガンタイプ
刺激が欲しくて動きが大きい。落ち着くには発散が必要。
●支援ポイント
- 活動前に“体動かす時間”をつくる
- 禁止ではなく“やっていい場所”を示す
- ルールは短く明確に
●遊びで支援
- ジャンプ10回チャレンジ→活動開始
- 力もちリレー(重い物を運ぶ)
- 鬼ごっこ+止まる(動→静の切り替え練習)
③ びくびくタイプ
不安が強く、初めて・変化・大きな音が苦手。
●支援ポイント
- 見通しで安心をつくる
- 見本・写真・絵で“わかりやすく”
- 小さな成功体験から
●遊びで支援
- “次なにする?”カードゲーム(視覚で安心)
- お化け退治ごっこ(怖いを小さな遊びに変換)
- お店屋さんごっこ(役割があると安心)
④ イライラタイプ
周りの刺激が入りすぎて集中が切れやすい。
●支援ポイント
- 席・場所を工夫(壁側・前方)
- 余計な物を減らす
- 短時間集中→休憩のリズム
●遊びで支援
- ミニパズル・型はめ遊び(机上で完結)
- 静かな宝探し
- 色探しビンゴ(集中しやすい)
【2】感覚が原因の姿勢・運動に関する4タイプ
姿勢保持・動きの滑らかさ・手の使い方に関係します。
⑤ グニャグニャタイプ(姿勢保持が苦手)
座りが続かない・すぐ姿勢が崩れる。
●支援ポイント
- 足が床につく環境
- 壁にもたれてOK
- 長時間は区切る
●遊びで支援
- クマ歩き・カニ歩きレース
- 坂道のぼり(マットや傾斜)
- 平均台ごっこ
- 風船バレー(姿勢を保ちながら動く)
⑥ ぎこちないタイプ(動きが不安定)
転びやすい、連続動作が苦手。
●支援ポイント
- 見本はゆっくり・大きく
- 競争より“まねっこ”
- 距離・高さ・難易度を段階的に
●遊びで支援
- スカーフキャッチ(ゆっくり落ちる)
- ケンケンパ
- 模倣ダンスゲーム
- 障害物ごっこ
⑦ ぶきっちょタイプ(手先が不器用)
つまむ・切る・折るが苦手。
●支援ポイント
- 道具のサイズを合わせる
- 指先あそび→制作の順
- 手を添えて“動き”を一緒に確認
●遊びで支援
- 洗濯バサミモンスター(つまむ力UP)
- ストロー差し
- 粘土のちぎる・丸める
- スーパーボールすくい
⑧ 両手ぶきっちょタイプ(左右の協応が苦手)
紙を押さえながら切るなど“両手同時”が難しい。
●支援ポイント
- 両手を使う遊びから
- 用具を固定して負担減
- 左右同時の動きを大人がサポート
●遊びで支援
- 新聞びりびり(両手で引っ張る)
- ミニパラバルーン(2人で上下)
- ペットボトルころころ
- ボール運びリレー
【3】感覚の識別・フィルタリングに関する2タイプ
違いがわかりにくい / 動きを追いにくいことが行動に影響。
⑨ わかんないタイプ(識別が入りにくい)
細かい違いに気づきにくい。指示が伝わりづらい。
●支援ポイント
- 大きく・はっきり・ゆっくり
- 視覚提示多め
- スモールステップ
●遊びで支援
- 色合わせマッチング
- 大きい・小さい運びゲーム
- 同じもの探し
- 明確な完成形のパズル
⑩ どこいったタイプ(追視が苦手)
動くものを目で追えない。
●支援ポイント
- ゆっくりした動きから
- 目で追う経験を積む
- 集団移動は見やすい位置に
●遊びで支援
- 風船バレー
- スカーフ投げキャッチ
- ゆるいボールころがし
- 電車ごっこ(前の人を目で追う)
■ 10タイプはラベルではなく“理解の道具”
10タイプは、子どもを分類するためではありません。
行動の理由を知るための“地図”です。
地図があれば、
- 何に困っているのか
- どう支援すればいいか
が見えるようになります。
結果として、
集団の中でも個が埋もれない保育が可能になります。
■ まとめ
保育は「集団を見る」と「個を見る」の両立が求められる仕事。
大変だけれど、子どもの理解が深まるほど、
関わりは優しく、楽しく、確かなものになります。
今回の10タイプ理解は、
**誰でも今日から使える“個別最適な支援の土台”**です。
- 支援ポイントで保育者の視点が整い
- 遊び支援で子どもは自然に育ち
- クラス全体の空気がやさしくなる
そんな保育につながります。


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