「先生、手を貸しすぎです! 全部やってもらえると思って、自分でやらなくなりますよ」
若かりし頃、先輩から受けたこの忠告。保育業界に伝わる**「手出し厳禁の掟」**です。
その言葉を聞きながら、私は心の中でずっとモヤモヤしていました。
「え、それって本当? 本当に手伝い続けたら、子どもは『一生靴下が履けない人』になっちゃうの?」
――よし、実験だ。
私がクラスのリーダーになった時、心の中の白衣を着て、ある壮大なプロジェクトを開始しました。
名付けて、『あえて全力で手伝い続けてみようキャンペーン』。
「手伝い続けたら本当にやらなくなるのか?」という都市伝説を、身をもって検証することにしたのです。
さて、どうなったと思います?
結果、子どもたちは見事に2つのタイプに分かれました。
1. 「王様・お姫様」タイプ
「くるしゅうない、近こう寄れ(靴下を履かせよ)」と、全力で甘えてくる子。
2. 「職人魂」タイプ
「手出し無用! 私がやる!」と、むしろ手伝われるのを拒否する子。
ここからが腕の見せ所です。
(多少の誇張をお許しあれ。)
「王様タイプ」には、執事になりきってこう囁きます。
「おお、素晴らしい足の運び! では、最後の仕上げだけは王様ご自身の手で…!」
励ましとユーモアで、少しずつ王座から降りていただき、自分で動く楽しさを伝えます。
「職人タイプ」には、そのプライドをくすぐります。
「さすが師匠、そのボタンさばき、見事です!」
自分でやろうとする意欲を全力で称賛します。
するとどうでしょう。
最終的には、王様も職人も、みんな当たり前のように自分で支度を始めたのです。
結論。
「手伝い続けるとダメになる」という呪いは、存在しませんでした。
子どもが望んでいないのに無理やり手を出すのは「お節介」ですが、求められた甘えを受け止めるのは「安心感の給油」です。
結局のところ、大事なのは「手伝うか・手伝わないか」という作業の話ではなく、「どう関わり、どう声をかけるか」という心のキャッチボールだったんですね。
もし今、「手伝いすぎかな?」と悩んでいる方がいたら、安心して「期間限定の執事」を楽しんでみてください。子どもたちは満足したら、ちゃんと自分で旅立っていきますから。


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