【導入:目標ってノルマのこと?】
もくじ
「保育の目標」と聞くと、何を思い浮かべますか?
「逆上がりができること?」
「平仮名が書けること?」
「給食を完食できること?」
いいえ、そんな小さな話ではありません。
保育所保育指針には、もっと壮大で、まるで少年漫画の最終回のようなテーマが書かれています。
今日は、指針の中で「最もカッコよくて、最も誤解されやすい」あの名文を翻訳します。
1. 指針史上、最高の名言が出た
まずは、保育所保育指針第1章にある、この一文を見てください。
【原文】
「子どもが現在を最も良く生き、望ましい未来をつくり出す力の基礎を培う」
これです。この一文、テストに出ます。そして、心に刻むべき言葉です。
でも、「現在を良く生きる」ってどういうこと?
「望ましい未来」って、タワマンに住むこと?
ここを勘違いすると、保育は一気に「スパルタ教育」か「ただの放任」になってしまいます。
【超訳】
「今この瞬間を『最高!』と思って過ごさせろ。そうすれば、勝手に『最強の大人』になる基礎ができる!」
2. 「現在を最も良く生きる」=わがまま放題?
「現在を良く生きる」というと、「子どもの好きなようにさせる(ゲームし放題、お菓子食べ放題)」ことだと勘違いする人がいます。
違います。それは「現在をダラダラ生きている」だけです。
指針が言いたいのは、こういうことです。
- 泥団子作りにて、指紋がなくなるほど熱中している時。
- ダンゴムシの動きを、瞬きも忘れて10分間見つめている時。
- 友達とケンカして、悔しくてワンワン泣いている時。
その瞬間、その子が「全集中」で生きているかどうか。
大人の都合で「服が汚れるからやめなさい」とか「もう時間だから次に行くよ」と中断させず、今の感情、今の興味を出し切らせること。
これが「現在を最も良く生きる」です。
3. 「未来」は「今」の積み重ねでしかない
そして後半の「望ましい未来をつくり出す力の基礎」。
多くの大人は、子どもの未来を心配して、ついこう言います。
「今、我慢して勉強すれば、将来楽になるよ」
「今、野菜を食べないと、大きくなれないよ」
これは、「未来のために、現在を犠牲にする」考え方です。
しかし、指針はこれを否定します。
【超訳】
未来の力は、今の遊びの中にしか落ちてないぞ!
- 鬼ごっこで走り回る(現在)➡ 体力と判断力がつく(未来の基礎)
- 積み木が崩れて工夫する(現在)➡ 挫折を乗り越える力がつく(未来の基礎)
- 「貸して」「いいよ」のやり取り(現在)➡ コミュ力がつく(未来の基礎)
つまり、「現在(今)」を疎かにして、「未来」だけを手に入れることはできないのです。
2階(未来)を作りたいなら、まず1階(現在)を頑丈に作れ。そういうことです。
4. 結論:明日の保育でやるべきこと
私たちは、子どもを「未来の大人」として見るのではなく、「今を生きる子ども」として見なければなりません。
「望ましい未来」を作るために、保育士ができる最高の方法。
それは、「今日一日、楽しかったー!」と子どもに言わせることです。
- 「早くしなさい」と言いたくなったら、この言葉を思い出してください。
- 「将来のために」とドリルをさせたくなったら、泥遊びをさせてください。
「今」を充実させることが、最短ルートで「未来」を作る。
これが、保育所保育指針が私たちに託した『目標』の正体です。
【明日の一手】
明日は、子どもが何かに夢中になっていたら、声をかけるのを30秒我慢して見守ってみましょう。
その背中には今、「望ましい未来」へのエネルギーがチャージされています。
(次回のテーマは「(3)保育の方法」。どうやって遊ばせるのが正解?に迫ります!)



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