「男性保育士には、娘のオムツを変えて欲しくない」
「トイレの介助は女性の先生にお願いしたい」
保育の現場にいると、時折そんな声を耳にすることがあります。
実際に、保護者の方から直接相談を受けたという同僚の話も聞いたことがあります。
正直なところ、その気持ちは痛いほど分かります。
悲しいことですが、世の中では子どもを対象とした事件が起きており、その加害者が男性であるケースも多く報道されています。
大切な我が子を守りたいと思う親心として、「触れさせたくない」「何かあったら怖い」と防衛本能が働くのは当然のことです。
ですが、現役の保育士として、「それでもやっぱり、男性保育士のトイレ介助は必要だ」と考えています。
今回は、少しセンシティブなこの問題について、きれいごと抜きの現場のリアルな視点からお話しします。
トイレ介助は「処理」ではなく「感動の共有」
なぜ、男性保育士もトイレ介助に関わるべきなのか。
人手不足だから?女性職員が大変だから?
もちろんそれもありますが、一番の理由は「子どもの成長のチャンスを逃さないため」です。
トイレトレーニングが必要な年齢の子どもたちにとって、トイレに行くことは決して楽しいことではありません。
「遊びを中断される」「面倒くさい」「オムツでした方が楽」
子どもたちからすれば、トイレはあまり行きたくない場所になりやすいです。
そんな中で、
「お兄さんパンツになりたい!」
「ちょっとトイレ行ってみようかな」
という小さな意欲が芽生える瞬間があります。
そして、勇気を出して便器に座り、おしっこが出た瞬間。
「やったね!すごいじゃん!イエーイ!!」
と、大好きな先生がハイタッチして一緒に喜んでくれる。
この「成功体験」と「喜びの共有」こそが、子どもの自尊心を育て、次のステップへの原動力になります。
その時、隣にいるのが男性保育士だったら?
もし、子どもが「今やる気だしてる!」「今出た!」という瞬間に、一番近くにいたのが男性保育士だったらどうでしょう?
そこで「あ、先生は男だからダメなんだ。女の先生が空くまで待ってて」と言ってしまったら・・・。
子どもの熱量はどうなるでしょうか。
せっかくの「できた!」という喜びを、その場で分かち合えない。
これは、子どもにとってマイナスでしかないと私は思います。
保育士は、排泄の処理係ではありません。
子どもの「できた」を一番近くで支え、共に喜べる人です。
想像を絶する「トイトレ」の現場
少し現実的な「大人の事情」もお話しします。
トイレトレーニング時期の保育園のトイレは、まさに戦場です。
ただオムツを変えるだけではありません。
- 上履きを脱ぐ。
- ズボンとパンツを脱ぐのを手伝う。
- 便器に座ってもらう。
- 出たら一緒に全力で喜ぶ(出なくても、座れたことを褒める)
- オムツやパンツを履いてもらう。
- ズボンを履くのを手伝う。
- 上履きを履くのを手伝う。
- 手を洗うように促し、必要に応じて一緒に洗う。
この一連の動作を、20人近い子どもたちがひっきりなしに来ます。便器が3つあれば、3人同時に進行します。
そして相手は、あの2歳児ごろです。
ここで「男性はトイレに入らないでください」となると、どうなるか。
女性保育士への負担が限界を超えます。
職員が疲弊すれば、当然「笑顔」や「丁寧な関わり」が減ります。
結果として、保育の質が下がり、子どもたち一人ひとりに十分な愛情を注げなくなる可能性があります。
「チーム保育」として子どもを守るためにも、男性の手は必要なのです。
信頼関係と、これからの保育
もちろん、「信頼関係があるからやらせてくれ」と親御さんに押し付けるつもりはありません。
信頼関係があっても、「やっぱり嫌なものは嫌」という生理的な感覚を持つ方もいらっしゃいます。
だからこそ、私たち保育士(特に男性保育士)は、日頃から意識しなければなりません。
- 保護者と密にコミュニケーションを取れているか?
- 「あの先生なら安心して任せられる」という信頼貯金はあるか?
- 園として、密室を作らない透明性のある環境ができているか?
それでも「何が何でもダメ!」というご家庭があれば、それは尊重します。無理に行うことはしません。
ただ、「男性保育士がトイレ介助をすることで、お子さんの成長を見守る目が増え、より手厚い保育ができるんですよ」という現場の想いだけは、どうしても伝えておきたいのです。
性別に関わらず、すべての保育士がプロとして、子どもの「最善の利益」のために動ける社会。
それが、子どもたちにとっても一番幸せな環境ではないでしょうか。



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