【保育士監修】「不適切保育」の具体例とは?どこからが虐待?指針に基づくNG行動チェックリスト

保育をまなぶ、読み解く。

「つい大きな声を出してしまった」「これってしつけ?それとも不適切?」 保育の現場で忙殺される中で、自分の保育に自信を持てなくなっていませんか?あるいは、我が子の通う園の対応に違和感を覚えたことはありませんか?

近年、ニュースで耳にする機会が増えた「不適切保育」。これは明らかな「虐待」の一歩手前、あるいはすでにその領域にある行為を含みます。

この記事では、保育所保育指針の人権擁護の観点に基づき、何が「不適切保育」にあたるのか、現場でありがちな具体的なNG事例を徹底解説します。


そもそも「不適切保育」とは?定義と指針の根拠

不適切保育とは、簡単に言えば**「子どもの人権や人格を尊重していない関わり」**のことです。

『保育所保育指針』の第1章には、以下のように明記されています。

保育所保育指針 第1章 総則 1(4)子どもの人権の尊重 保育士等は、子どもの人権を尊重するとともに、子ども一人一人の人格を尊重して保育を行わなければならない。

つまり、身体的な暴力だけでなく、「心を傷つける言葉」や「子どもの意思を無視した強制」も、指針に反する不適切な保育となります。これらが常態化・エスカレートすると、児童虐待防止法における「虐待」へと繋がります。


【ジャンル別】不適切保育の具体例チェックリスト

全国保育士会が作成したセルフチェックリストや、過去の自治体の実態調査に基づき、現場で起こりやすい事例を「言葉」「身体的接触」「放置・無視」の3つに分類しました。

1. 言葉・態度による不適切なかかわり(心理的虐待に相当)

子どもを脅したり、羞恥心を煽ったりする行為です。「しつけ」という名目で行われがちですが、子どもの自己肯定感を著しく低下させます。

  • 脅迫的な言葉がけ
    • 「給食を全部食べるまで遊ばせません」
    • 「片付けないなら、全部捨てるよ」
    • 「先生の言うこと聞かないと、お化けが来るよ(閉じ込めるよ)」
  • 自尊心を傷つける・比較する
    • 「赤ちゃんみたいだね、恥ずかしい」
    • 「〇〇ちゃんはできたのに、どうしてあなたはできないの?」
    • 「(失敗したことに対して)あーあ、またやった」とため息をつく。
  • 呼び捨て・あだ名
    • 乱暴に「お前」「あんた」と呼ぶ。
    • 子どもの身体的特徴を揶揄したあだ名で呼ぶ。

2. 乱暴な関わり・身体的な拘束(身体的虐待に相当)

「忙しいから」「安全確保のため」という理由でも、必要以上の力や強制力が働く場合は不適切となります。

  • 無理やり動かす
    • 散歩の列に戻す際、手首を強く引っ張る。
    • なかなか着替えない子どもの服を、無理やり脱がせる。
  • 食事・睡眠の強要
    • 嫌がる子どもの口に無理やりスプーンを押し込む。
    • 寝ない子どもの体を布団に押し付けたり、顔を覆ったりして動きを封じる。
  • 罰を与える
    • 正座をさせる。
    • 廊下や別室に一人で立たせる。

3. 無視・放置・差別(ネグレクトに相当)

特定の子どもだけ構わなかったり、生理的欲求を満たさなかったりする行為です。

  • 生理的欲求の無視
    • 「さっき行ったでしょ」とトイレに行かせない。
    • お漏らしをした際、汚れた服のまま長時間放置する。
    • 鼻水が出ていても拭かずに放置する。
  • 応答的な関わりの拒否
    • 子どもが話しかけているのに、スマホや書類作業に夢中で無視する。
    • 泣いている子どもに対して「泣き止むまで抱っこしない」と突き放す。
  • 特定の好悪
    • 「手がかからない子」ばかり可愛がり、「手がかかる子」への対応が冷淡になる。

なぜ「不適切保育」は起こるのか?

決して「その保育士の性格が悪いから」だけで片付く問題ではありません。背景には構造的な問題があります。

  1. 人手不足と業務過多: 配置基準ギリギリ(あるいは不足)の中、安全を守るだけで精一杯になり、心に余裕がなくなる。
  2. 知識の欠如とアップデート不足: 「昔はこれで良かった」「自分もこうやって育てられた」という古い価値観のまま、現代の「子どもの権利条約」に基づいた保育観に更新できていない。
  3. 閉鎖的な環境: 「先輩がやっているから」という理由で、不適切な関わりが園の文化として継承されてしまっている。

「これは不適切?」と迷った時の判断基準

もし、自分や同僚の行動に迷いが生じたら、以下の問いを自分に投げかけてみてください。

「保護者の前でも、同じことができますか?」 「自分がその子の親だったら、その関わりを許せますか?」 「その行動の目的は『子どもの最善の利益』ですか?それとも『大人の都合』ですか?」

この問いに自信を持って「YES」と言えない場合、それは不適切保育である可能性が高いです。


まとめ:より良い保育のために

不適切保育の具体例を知ることは、保育士を責めるためではなく、子どもを守り、そして保育士自身を守るためにあります。

「今日はちょっとイライラして、強い口調になってしまったな」 そう気づけること自体が、改善への第一歩です。一人で抱え込まず、園全体で「言葉がけの見直し」や「余裕のあるシフト作り」について話し合うきっかけにしてください。

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