〜脳の発達から見ても大切な「受容的な援助」〜
もくじ
子どもたちを見ていると、日々の生活の中で「気持ちが大きく揺れ動く瞬間」が必ずあります。
登園時に保護者と離れる寂しさ。
友だちとのトラブルで怒りが込み上げる場面。
思い通りにいかず悔しくて涙が出る時。
健康診断で見知らぬお医者さんに不安を感じる姿。
失敗を見られて恥ずかしくなる瞬間。
こうした心の揺れは、決して“悪いもの”ではありません。
子どもが成長していくために欠かせない大切な経験 です。
しかし、大人はついその揺れを早く止めようとしてしまいがちです。
■ついやってしまう関わり方
子どもが泣いたり怒ったりすると、大人はつい…
- 別の遊びに誘って気をそらす
- 楽しい話題へ切り替えようとする
- 「もう泣かないの」と急いで落ち着かせようとする
このような関わりをしてしまうことがあります。
もちろん、状況によっては必要なこともあります。
しかし、常に“気持ちを切り替えさせる”対応ばかりになると、
子どもは自分の感情とじっくり向き合う経験が不足してしまいます。
■脳の仕組みから見ても「寄り添い」が必要な理由
子どもが気持ちを大きく揺らすのは、
実は 脳の発達段階 と深く関係しています。
●大脳辺縁系(感情が生まれる場所)
- 不安・怒り・悲しみ・驚きなどの感情をつくり出す
- 幼児期は特に活発に働きやすい
子どもは、ちょっとした出来事でもこの部分が強く反応します。
●前頭前野(感情を落ち着かせる場所)
- 気持ちの切り替え
- 我慢・判断
- 問題解決
- 自制心
こうした“感情を整える力”をつかさどります。
しかし前頭前野は…
👉 3〜6歳ではまだ未発達で、20歳近くまで育ち続ける
つまり、幼児期の子どもは
感情(大脳辺縁系)は強く動くのに、
それを調整する力(前頭前野)はまだ弱い
という状態にあります。
だから、
怒る・泣く・乱れる・切り替わらない
は【当然の反応】なんです。
■受容的な援助がなぜ必要なのか?
そこで大人の関わりが重要になります。
大人が落ち着いて寄り添うことで…
- 子どもの不安や怒りが落ち着いていく
- 大脳辺縁系の興奮が和らぐ
- 前頭前野が働きやすい状態になる
つまり、
大人の落ち着いた関わりが “子どもの脳の調整を助ける” のです。
これは
✔ 共同調整(co-regulation)
と呼ばれ、
のちの
✔ 自己調整(self-regulation)
につながっていきます。
■では、どんな援助が有効なのか?
① 気持ちをそのまま受け止める
安心して感情を表せる環境づくりが第一歩。
- 「悲しかったね」
- 「悔しかったよね」
- 「びっくりしたんだね」
気持ちを言葉にして代弁することで、
子どもは “自分の気持ちはここで出していいんだ” と安心できます。
例:登園で泣き続ける子
「離れるの、寂しいよね。ここに一緒にいようね。」
と、気持ちが落ち着くまでそばにいることが安心につながる。
② 取り組んだ姿勢や思いを肯定する
結果ではなく“その子の気持ち”に焦点を当てる。
- 「自分でやりたかったんだね」
- 「それを大事に思ってたんだよね」
- 「友だちに言いたかった気持ちがあったんだね」
心の奥の本音を代弁することで、
子どもは自分の感情を理解しやすくなります。
③ 必要に応じて、一緒に行動しながら励ます
ただ見守るだけではなく、
必要な時は“伴走”が有効です。
例:うまくできずに諦めそうな時
「ここだけ押さえるね。一緒にやってみよう」
と手伝うことで、再挑戦する勇気が育つ。
■こうした関わりが育てる力
受容的な援助を積み重ねることで、子どもは…
- 素直な気持ちを安心して表せる
- 気持ちは否定されないと理解する
- 心が揺れた後に立ち直る力(レジリエンス)が育つ
- 「気持ちはこうやって整えていくんだ」と体験的に学ぶ
- 自己肯定感が高まる
- 前頭前野の発達にも良い影響がある
つまり、
感情をコントロールする力の土台が育つ のです。
■まとめ
“気持ちが大きく揺れ動く時”は、子どもが必ず経験する成長のプロセスです。
その気持ちを急いで切り替えさせるのではなく、
ゆっくりと寄り添い、受け止め、共に過ごすことで、
子どもは自分の感情と向き合う力を育てていきます。
脳の発達段階から見ても、
大人の落ち着いた関わりは、子どもの心の成長を支える大切な土台 です。
揺れ動く気持ちこそ、大切にしたい育ちの瞬間。
保育者の温かな寄り添いが、子どもの未来の力につながっていきます。



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