はじめに
もくじ
子どもが自分で食べられるようになると、成長したなぁと感じる嬉しい瞬間ですよね。でも、スプーンや箸を上手に使えるようになるまでには、手や腕の使い方、口の動き、姿勢など、いくつもの力が関わっています。
ここで多くの方が抱く疑問が、「いつからスプーンや箸を使わせればいいの?」ということです。焦って早く持たせても、まだ手指や腕の操作が未熟な段階ではうまく使えず、子どももストレスを感じてしまいます。
安心してください。子どもは遊びや日常の動きの中で少しずつ力をつけ、自然にスプーンや箸を使えるようになります。大切なのは、発達の段階を理解して、無理なくサポートすることです。
本記事では、手づかみ食べからスプーン・箸へと進む発達の流れや、保育現場でできる具体的なサポートの工夫をわかりやすく解説します。
食具操作の発達段階
- 手づかみ食べ
- 手で直接食べ物をつかみ、口に運ぶ段階
- 食べ物の感触を直接体験することで、口腔・感覚・運動の基礎が育つ
- 手拳回内握り(グー持ち)でスプーンを持つ
- 手全体で握るため、運ぶだけなら安定
- 指先はまだ独立して動かせない段階
- 静的3指握り
- 親指・人差し指・中指でスプーンを固定
- 指先はまだバラバラに動かさず、静止した状態で操作
- 手首・肘・肩の安定も重要
- 動的3指握り(スプーン・箸)
- 指先を細かく動かして操作できる
- 薬指・小指が安定して支えることで、親指・人差し指・中指が自由に動く
- 微細運動や鉛筆握り、靴紐結びにもつながる
直接操作から間接操作への移行
子どもはまず直接触れて確かめる操作からスタートします。
- 直接操作
- 手で食べ物を触る
- 砂場で手を使って形や感触を確認する
- この段階では、スプーンや箸はまだ早く、無理に持たせると拒否する
- 間接操作
- 道具(スプーン・フォーク・スコップ)を使う
- 遊びの中で手以外の道具を操作する経験が出てきたときにスプーン導入
- 例:砂場でスコップを使い始める、ブロックで道具を持つ遊び
- 「手で確かめる → 道具で操作する」という順序が自然
保育のポイント
- 遊びの中で自然に道具操作の経験を増やす
- 無理にスプーンを持たせず、遊びのタイミングで導入する
- 手の感触や触覚の体験は十分尊重する
手の操作性と「3:2の法則」
- 3本の指(親指・人差し指・中指) → 運ぶ・すくう・つまむなどの操作
- 2本の指(薬指・小指) → 土台として安定
イメージ例
- コインを入れる
- 鉛筆を持つ
- 靴紐を結ぶ
3本を自由に動かすには、土台となる2本の安定性が不可欠です。
安定性を育てる遊び例
- 四つん這い遊び → バランス保持、指の支え
- 鉄棒やぶら下がり → 握る力、安定性
- 握る遊び → ペットボトル・ボール・積み木を握る
- 手で押す・つかむ動作 → 指の2本安定性を鍛える
👉 ポイント:指先の練習よりも、まず土台の安定性を育てることが優先です。
支援のポイント
- 発達段階を見極め、無理に進めない
- 遊びや日常生活の中で自然に食具操作を経験させる
- 手・腕・体幹の安定を観察
- スプーンや箸の形状を工夫(握りやすい太めのスプーンなど)
まとめ
食具の発達は、手・口・姿勢・認知の総合的な成長のサインです。
保育者は無理に教えるのではなく、遊びや生活の中で自然に使える環境を整えることで、子どもの「食べる力」を育てられます。
「いつから使わせるか」と迷ったら、遊びの中で道具を使い始めたタイミングが目安。焦らず、段階を踏んでサポートすることが成功のコツです。
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