子どもの言葉の獲得は、単に言葉を覚えるだけでなく、コミュニケーションの手段として言葉を使う力を育むことが大切です。そのためには、子どもが自分の欲求や気持ちを伝えたいと思い、かつ分かってもらえると感じられる、信頼できる大人の存在が必要です。
子どもは、応答的な大人との関わりによって、自ら相手に呼びかけたり、承諾や拒否を表す片言や一語文を話したり、言葉で言い表せないことは指差しや身振りなどで示したりして、親しい大人に自分の欲求や気持ちを伝えようとします。
応答的な関わりの基本
応答的な関わりとは、子どもが何かを伝えようとしたときに、大人がそれに気づき、理解し、返答することです。
- 例1:片言の言葉に応える
子ども:「まんま!」
保育士:「そうだね、まんま食べようね。おいしいね!」 - 例2:身振りや指差しに応える
子どもが絵本を指差す
保育士:「あ、絵本が見たいんだね。どのページにしようか?」
こうしたやり取りを繰り返すことで、子どもは言葉で表現する楽しさを体験し、言葉の獲得が進みます。
具体的な応答的な関わりの方法
- 観察する
子どもの表情や姿、行動をよく見て、何を求めているのか、どんな気持ちかを理解します。- 例:おもちゃをじっと見ている → 「これで遊びたいのかな?」と声をかける
- 模倣と共感
子どもの発声や身振りを真似して受け入れ、共感します。- 例:子どもが「ば!」と発声 → 「ば!楽しいね、ばって言ったね!」
- 言葉の補完と拡張
子どもの一語や発声を拾い、適切な言葉で補ったり広げたりします。- 例:子ども:「わん!」
保育士:「そうだね、わんわんだね。犬さんが走ってるね!」
- 例:子ども:「わん!」
- 丁寧な返答
子どもの質問や発言に対して丁寧に答え、会話のキャッチボールを意識します。- 例:子ども:「これは?」
保育士:「それはりんごだよ。赤くて甘いね」
- 例:子ども:「これは?」
- 楽しい言葉の経験を作る
歌や手遊び、読み聞かせなど、遊びを通して言葉に触れる機会を増やします。- 例:手遊び歌「いないいないばあ!」を一緒にして、声を出す楽しさを体験する
年齢別の応答的な関わりの例
0〜2歳(乳幼児期)
- 特徴:一語文や片言、身振りや指差しで意思を伝える段階
- 関わり方の例
- 子どもが指差しでおもちゃを示す → 「これで遊びたいんだね、じゃあ一緒に遊ぼう!」
- 子どもが「まんま」と言う → 「うん、まんま食べようね、おいしいね」
- 子どもが泣いたり笑ったりする反応に → 「泣いちゃったね、大丈夫だよ」「笑ったね、楽しいね!」
2〜3歳(幼児期前半)
- 特徴:2語文や簡単な会話を始める時期、質問も増える
- 関わり方の例
- 子ども:「これなに?」 → 保育士:「それはボールだよ。転がすと楽しいね」
- 遊びの中で「やりたい!」 → 「そうだね、一緒にやろうか。どうやってやる?」
- 簡単な会話を拡張 → 子ども:「わんわん!」 → 保育士:「わんわんだね。犬さんが走ってるね。どこに行くかな?」
応答的な関わりのポイント
- 子どもの言葉の獲得は一朝一夕ではできません。焦らず、日常の繰り返しの中で育みましょう。
- 信頼関係の中での応答的な関わりが、言葉の基礎となります。
- 言葉だけでなく、表情や声のトーン、身振りなども言語獲得の大切な手がかりです。
💡 ポイントまとめ
- 観察:表情・姿・行動をよく見る
- 共感:発声・身振りを真似る
- 補完:一語や発声を広げる
- 丁寧:質問や発言に応える
- 遊び:歌や手遊びで言葉を楽しむ
子どもは、信頼できる相手に伝えたい、分かってもらいたいという気持ちの下で、自分も言葉を使おうとします。
保育士が日々の生活の中で観察・共感・言葉の補完を意識して関わることで、子どもの言葉の発達を自然に支えることができます。
子どもの言葉の成長を支えていきましょう。
あわせて読みたい「言葉が出ないと悩む前に」

コメント