心を育てる保育——「取った・取られた」だけで終わらせない関わり

子どもの「なんで?」がわかる場所

おままごとのお肉が欲しい2歳のAくん。

お肉を持っていたBくんに「貸して」と言うと、「あとで」と言われ、渋々待っていました。

そんな中、Bくんがお皿を持ったまま手を滑らせ、お肉が床に落ちてしまいます。

チャンス!とばかりに、Aくんは素早くお肉を拾いました。

当然、Bくんは「ダメー!」と怒って掴みかかろうとします。

Aくんは逃げます。

——ここで保育士が介入しました。

多くの大人がするのは「取った子を止めること」

よくあるのは、Aくん(取った側)を捕まえて

「取ったらダメだよ」「順番でしょ」と諭す対応。

もちろん間違いではありません。

でも、それでは**「相手の気持ちに気づく経験」や「自分の気持ちを整理する時間」**が十分に育ちません。

この先生がしたのは「怒っている子への共感」からのスタート

その先生はまず、怒っているBくんを抱き上げて、

小さな優しい声で話しかけました。

「取られたら嫌だよね。返してもらおうね。」

そして、Aくんに向かってこう伝えます。

「持っていかないでね。返してあげようね。」

Aくんは当然、「やだよー!」と拒否。

先生は追いかけず、静かに待ちます。

何度か返してね。やだよ。のやり取りを繰り返した後こう言った。

「やだけど、返してね。待ってるね。」

「待つ」という保育

Aくんは逃げながらも、手にしたお肉を見つめ、考えます。

お皿に乗せてみたり、眺めたり。

でも、なんだか楽しくなさそう。

そして少しして、自らBくんのもとへ行き、

「はい」

とお肉を返しました。

先生はすかさず、

「使いたかったのに返してくれてありがとう。」

と伝え、Bくんには

「終わったらAくんにも貸してあげようね。」

感情を整える力を育てる

ここで育っていたのは「順番」ではなく、心です。

「嫌だった」というBくんの気持ちを受け止めてもらう経験。 「返したくない」というAくんの気持ちを待ってもらう経験。

どちらも、「自分の気持ちは受け止めてもらえる」という安心感の中でしか育ちません。

先生が焦らず、叱らず、「待つ」ことを選んだその時間が、

Aくんの中に「心を動かして行動を変える力」を生みました。

🌱まとめ

子どもは「言われて分かる」より、「感じて気づく」ことで心を育てます。

保育者がすぐに正解を与えず、信じて待つこと。

それこそが、心の根っこを育てる関わりです。

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