子どもの「言葉」には、まだ上手に表現しきれない“思い”がたくさん隠れています。
ときには、その言葉をどう受け止めたらいいか迷うこともありますよね。
今回は、2歳児クラスのA君の「何かついちゃった!」という一言をきっかけに、
子どもの気持ちをどう読み取り、どのように関わっていくと良いのかを考えてみました。
戮エピソード
自由遊びの時間。発達がゆっくりめな2歳児クラスのA君が、手の汚れを気にして水道へ向かいました。
自分で蛇口をひねり、手を洗うA君。
洗い終えると、自分のタオルを探してウロウロし始めました。
タオルの場所に行き、自分のマークを探しますが、なかなか見つかりません。
再び周囲を見回し、指差ししながら確認して——
やっと自分のマークを見つけたA君は、「あ、あった!」と嬉しそうに言って手を拭きました。
そして、保育士の方を見て
「何かついちゃった!」と両手を見せたのです。
近くにいた保育士は「何かついちゃったの?じゃあ手を洗おう」と声をかけ、一緒に手を洗いました。
けれど、A君は小さく首を横に振っていたのです。
子どもが伝えたかった“本当の意味”は?
この場面、A君の「何かついちゃった!」という言葉は、いくつもの意味に受け取れます。
本当に何かがついた、という事実を伝えたかったのか。 うまく洗えなかったから、手伝ってほしかったのか。 きれいになったことを伝えたかったのか。 それとも、拭いたときにタオルについてしまったことを伝えたのか。
その答えは、本人にしか分かりません。
しかし、普段のA君の言語の発達段階や性格を考えると、「一緒に洗おう」とすぐに手を取る関わりは、少し違っていたのかもしれません。
“想像”と“決めつけ”の違い
保育では、子どもの行動や言葉の意味を「想像する力」がとても大切です。
けれど同時に、「決めつけない姿勢」も欠かせません。
“想像”は、子どもの気持ちに寄り添うための出発点。
でも“決めつけ”は、子どもの思いをこちらの枠に当てはめてしまう行為です。
決めつけて関わってしまうと…
子どもが自分の思いを伝える機会を奪ってしまう。 どこまで自分の力で訴えられるかを見極めるチャンスを失う。 「自分の気持ちはわかってもらえない」と感じる経験になる。
つまり、保育士が“良かれと思って”行動することで、
子どもの「自分で伝えようとする力」が育ちにくくなることもあるのです。
“共感”から始まる関わり
このような場面で大切なのは、すぐに行動で応じるのではなく、一度「共感」で受け止めることです。
たとえば——
「ほんとだね、何かついてるね。」
と一言返すだけでも、子どもは「伝わった」と感じます。
そのあとA君がどう動くかを観察し、必要であれば次の言葉を添える。
その“待つ時間”こそが、子どもの成長を支える関わりです。
まとめ:子どもの言葉の奥を見つめる力
子どもの言葉の裏には、たくさんの気持ちが隠れています。
“何かついちゃった”という小さな一言の中にも、
「伝えたい」「わかってほしい」「できたよ」といった感情が混ざっているかもしれません。
保育者が少し立ち止まり、
「この子はいま、どんな気持ちで言ったんだろう?」と考えることで、
その子の世界の見え方が少しずつ見えてきます。
想像しながらも決めつけず、共感を持って見守る。
そんな関わりが、子どもの“伝える力”と“自信”を育てていくのです。



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