―保育者が意識したい援助のポイント―
子どもが成長するうえで、困難にぶつかることは日常の一部です。
そのときに「どう乗り越えるか?」は、将来の生きる力に直結します。
そして、問題解決能力の土台となるのが “考える力”。
では、子どもの“考える力”を育てるために、保育者が意識すべきことは何でしょうか。
■『考える力』に必要な3つの力
① 自発性
自ら「やってみたい」と思い、行動しようとする力。
② 集中して継続する力
一つのことに意識を向け続け、試行錯誤を続けられる力。
③ 持続する力(あきらめない力)
うまくいかなくても気持ちを立て直し、挑戦し続けられる力。
この3つが組み合わさって初めて“考える力”が育ちます。
■① 自発性とは?
自発性=自分が必要だと思い、主体的に行動すること。
その源は
「やってみたい!」「自分でやりたい!」
子どもが自ら動き出すエネルギーは、
面白い・楽しい・嬉しい と感じるところから生まれます。
◆子どもは「嫌々やっていたら楽しくなる」が難しい
大人には経験があるので、
「最初は気が進まなかったけど…やってたら楽しくなってきた!」
という状態を作れます。
しかし、子どもは嫌々の状態のままでは、楽しさを見いだしにくいのが特徴です。
だからこそ、
興味が湧くきっかけを保育者が丁寧に作り、体験につなげていく支援が重要になります。
■子どもの自発性を「待つだけ」でいいの?
答えは NO。
もちろん、子どもが動き出すのを大切にしたい場面もありますが、
保育者にはできることがたくさんあります。
■保育者ができる“自発性を育てる環境づくり”
◇① やってみたくなる環境を用意する
・子どもが手に取りやすい道具配置
・発達に合った素材の準備
・見通しが立つような活動の流れ
例)
・高いところにお絵描き道具 → 自発性は育ちにくい
・子どもの目線の高さ・すぐ手に届く位置に置く → 「描いてみたい!」につながる
◇② “面白そう!”と思える関わりをする
保育者がワクワクして関わると、子どもにも伝わります。
例)
「このボタン押したらどうなると思う?」
「この色混ぜたら、何色になるかな?」
こうした“問いかけ”は、押しつけではなく興味の種まきになります。
◇③ “できた!”の積み重ねで自信をつくる
面白そう → やってみた → できた!
この小さな成功体験が、次のステップへの意欲につながります。
■保育者が避けたい言葉がけ
自発性を育てるには、子どもの主体性を奪う言葉はできるだけ避けたいところ。
NGワード
- 命令:「こうしなさい!」
- 指図:「こうやるの。見てて。」
- 禁止:「それはダメ!」
- 許可:「やっていいよ?」(“やらされてる”感につながりやすい)
これらは、
判断の主導権を大人が握ってしまい、子どもの考える余地を奪う可能性があります。
■じゃあ、どうすればいいの?
▶ “関心を持って見守る”が基本
子どもが好きな遊びに熱中できる時間を確保することで、
集中力と 我慢強さ(持続力) が育っていきます。
▶ 子どもが困っていても、すぐに手を出さない
たとえばブロックが倒れてしまったとき。
NG
「ほら、こうやればうまくいくよ」→考える機会を奪う
GOOD
「どうしたら倒れないかな?」「ここを押すとどうなる?」
ヒントは出しても、解決は子どもに委ねる
これが“考える力”を育てる支援です。
■『頑張ってできた!』がドーパミンサイクルを生む
熱中 → 集中 → 工夫 → 達成 → 嬉しい
この一連の体験は脳にとってもご褒美で、
ドーパミンが分泌され、また挑戦したくなる良い循環が生まれます。
■まとめ
子どもが困難にぶつかった時、
自分で考えて解決できるようになるために、保育者が意識したいのは次のポイントです。
- 自発性を奪わない関わりをする
- やってみたくなる環境・言葉がけで興味を引き出す
- すぐに助けず、ヒントを出して「考える余白」を残す
- 成功体験を積み重ね、ドーパミンサイクルをつくる
子どもの主体的な挑戦を支えることで、
“考える力”は確実に伸びていきます。

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