子どもが乱暴に見えるのはなぜ?
もくじ
お友だちを強くたたいてしまう、物を乱暴に扱ってしまう、遊びの中で力加減が難しい…
そんなとき「乱暴」「わがまま」「落ち着きがない」と感じること、ありませんか?
でも実は、それは性格の問題ではなく、“感覚の発達”の途中にある姿かもしれません。
感覚には7つの種類があります
私たちは日々、いろいろな「感覚」を使って生活しています。
よく知られている五感(視覚・聴覚・嗅覚・味覚・触覚)に加えて、
実はとても大切な感覚がもう2つあります。
それが、**「固有感覚」と「前庭感覚」**です。
これらはエアーズ博士の「感覚統合理論」でも、
発達の土台を作る3つの基本感覚(触覚・固有感覚・前庭感覚)のひとつとして位置づけられています。
固有感覚とは?〜力加減を感じる感覚〜
「固有感覚」とは、筋肉や関節の動きを感じ取る感覚です。
体のどの部分がどのくらい動いているのか、どれくらいの力を使っているのかを脳に伝えています。
こんなときに使っています
- 友だちの肩を「トントン」と軽くたたく
- 積み木をそっと積み上げる
- ペットボトルからお茶をこぼさずに注ぐ
これらはすべて、固有感覚が働いているからこそできる動作です。
固有感覚が未発達な場合に見られる姿
- 「ねぇねぇ」と声をかけるときに強く叩いてしまう
- 遊びの中で押しすぎたり、引っ張りすぎたりしてしまう
- 物を扱うときに力の加減がわからず壊してしまう
こうした行動は、「乱暴」ではなく力加減を感じ取る感覚がまだ育っていないために起きていることがあります。
固有感覚を育てるおすすめの遊び
- おままごとやブロック遊び:そっと積む・つかむ・動かす体験で手の力加減を覚える
- 紙や粘土遊び:押す・ちぎる・丸める動作で指先の微細運動を鍛える
- 水遊び:コップに水をそっと注ぐ、スプーンですくうなどで力加減を体験
前庭感覚とは?〜バランスや動きを感じる感覚〜
「前庭感覚」は、体の傾きや回転、スピードなどを感じ取る感覚です。
内耳(耳の奥)で感じ取り、姿勢やバランスを保つために重要な働きをしています。
この感覚が使われている場面
- ブランコや滑り台で遊ぶ
- くるくる回る
- 走って止まる、ジャンプして着地する
こうした動きの中で、子どもたちは前庭感覚を育てています。
前庭感覚が未発達な場合に見られる姿
- じっと座っていられない
- 姿勢が崩れやすい
- 揺れる遊具を怖がる、または平気すぎてずっと回りたがる
これも「落ち着きがない」「怖がり」といった性格ではなく、
体の感覚がまだ育っていないサインかもしれません。
前庭感覚を育てるおすすめの遊び
- ブランコや滑り台:体の傾きや揺れを感じ、バランス感覚を育む
- くるくる回る遊び:安全な範囲で回転することで体の回転感覚を育てる
- ジャンプ・ランニング:ジャンプして着地する、走って止まるなどで体の動きをコントロールする感覚を育む
感覚の発達は「体験」から育つ
感覚の発達は、日常生活の中での体を使った経験によって育ちます。
走る・転ぶ・押す・引く・ぶら下がる・回る——
そんな何気ない“遊び”が、実は感覚を豊かに育ててくれているのです。
感覚が整うことで、
力加減や姿勢のコントロールが自然とできるようになり、
お友だちとの関わりもスムーズになっていきます。
保護者の方へのメッセージ
「なんでこんなことするの?」と感じたとき、
ちょっと立ち止まって“感覚の発達”の視点から見てみてください。
きっと、子どもの行動が少し違って見えてくるはずです。
叱る前に、「もしかしてこの子、力加減やバランスがまだ分かりにくいのかも?」
そう考えられるだけで、関わり方がぐっと優しくなります。
まとめ
- 「乱暴」「落ち着かない」行動の背景には、感覚の発達の未熟さが隠れていることもある
- 固有感覚=力加減を感じる感覚
- 前庭感覚=バランスや動きを感じる感覚
- 感覚は遊びや体験を通して育つ
- 行動の裏にある“発達の途中”を理解することが大切
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