幼児期に必要なのは「多様な遊び」と「身のこなし」の経験
もくじ
私たち人間の生活は、毎日が「判断」と「決断」の連続です。
そして、その判断や決断を支えるのが “自分の中の物差し(判断基準)” です。
長さ、大きさ、重さ、速さ…
暮らしの中に必要な物差しは数え切れないほどあります。そして、ただ物差しを持っているだけでなく、その精度が高いかどうか もとても重要です。
例えば、ミリ単位の物差しでは山の高さは測れません。
逆に、大まかな目盛りの物差しでは精密な測定ができません。
つまり、
「どの場面で、どの物差しを使うべきか」
これを選び取る力が必要なのです。
では、その力はどこで育つのか?
それは、幼児期に体験する “様々な身のこなし” の中で、感性として自然に体内へ蓄積されていきます。
- 登る
- 走る
- くぐる
- 跳ぶ
- バランスを取る
- 投げる
- よじのぼる
こうした多様な身体活動の積み重ねこそが、子どもの頭の中に精度の高い「物差し」を増やし、状況に応じて使い分ける土台となります。
そして同じくらい効果があるのが “自由な工作遊び”。
特に5歳以降は、身体活動だけでなく、空き箱や身近な素材でつくる工作活動が判断力や思考力を大きく育てます。
“外遊び=身のこなし” ではない理由
「いろんな身のこなしが大事」という話をすると、
“じゃあ外遊びをいっぱいさせればいいんでしょ?”
と誤解されがちです。
しかし、これは危険です。
例えば、
外で遊ぶのが好きでも 砂遊びだけ しかやらない子がいたとします。
これはこれで楽しい遊びですが、“様々な身のこなし”という観点で見ると、動きの種類は非常に限定されています。
つまり、
「外で遊んでいる=身のこなしが育つ」ではありません。
大切なのは、遊びの「内容」です。
工作も“自由度”がポイント
工作も同じです。
積み木や既成のブロックも良い遊びですが、
思考力を育てるという観点では、空き箱・食品トレー・牛乳パックなどの身近な素材を使った“自由な工作”の方が圧倒的に効果的です。
なぜなら、
- どう組み合わせる?
- 何に見立てる?
- どんな形にする?
- どうすれば立つ?
- 強度はどうする?
など、子ども自身が判断する場面が無限にあるからです。
多様な遊びが育てる「論理的で柔軟な思考」
では、このような経験を積み重ねた子はどう育つでしょうか?
■多様な遊びが充実している子
- 論理的で柔軟な思考が育つ
- “次はこうしたらうまくいくかな?” と試行錯誤できる
- 新しい状況でも落ち着いて判断できる
- 自分の中の物差しを場面に合わせて使い分けられる
日々の遊びの中で、たくさんの「判断と決断」を繰り返しているからです。
■逆に、経験が不足している子
- 思い込みが強く、考えを変えるのが苦手
- 応用がきかず「いつも通り」しかできない
- 自分の中の物差しが少ないため、新しい状況でパニックになりやすい
- 感情的な反応が多くなる
理由はシンプルで、
経験が少ないため、使える物差しが少ないからです。
限られた経験の中から答えを探さざるを得ないので、柔軟な判断ができません。
まとめ
幼児期に育てるべきは、“元気いっぱい色々な遊びに取り組む力” です。
これは、運動神経のためだけではなく、
知的能力・判断力・思考の柔軟性 を育てるために必要不可欠です。
- 多様な身のこなし
- 自由な工作
- 実体験の積み重ね
これらが、子どもの中に「精度の高い物差し」を増やし、
生きる力そのものをつくっていきます。


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